家族信託の受託者の選び方|家族・法人どちらが正解か基準を解説

- 受託者に国家資格は不要で、家族の中から1名選ぶのが基本。
- 司法書士や弁護士など専門家は、業として受託者になることはできない。
- 収益物件が多い場合は、一般社団法人を受託者にする設計も選べる。
- 受託者が亡くなると信託が終わるため、後継受託者を契約で定めておく。
- 受託者は信託財産を自分の財産と分けて管理する義務を負う。
家族信託 受託者 選び方の結論

受託者は、財産管理を任せられる信頼性と、契約が続く間(多くは数十年)を担える健康・年齢を満たす家族から1名を選ぶのが結論です。
理由はシンプルで、受託者は信託財産を管理・運用・処分する強い権限を持つからです。
権限が大きいぶん、信頼できない相手だと財産を私的に使われるリスクがあります。逆に、信頼できても高齢すぎる人だと、途中で管理ができなくなる。だから私は「信頼性」と「継続性」の2軸で見るよう勧めています。
1.家族信託の受託者とは?
受託者とは、委託者から託された信託財産を管理・運用・処分する人です。

家族信託は「委託者・受託者・受益者」の3者を定める制度です。財産を託す親が委託者、託される子などが受託者、利益を受け取る人が受益者にあたります。
実務で多いのは、親が委託者かつ受益者、子が受託者というかたちです。親の財産を子が管理し、その利益は親本人が受け取る、という設計ですね。
受託者は家族の代表として財産を守る人
受託者は、信託財産を自分の財産と完全に分けて管理する「分別管理」の義務を負います。
具体的には、信託口口座を開設し、信託財産を受託者個人の財産と区別して運用します。
さらに受託者には、善管注意義務と忠実義務があります。要するに「自分のためではなく、受益者のために誠実に管理しろ」というルールです。
前述の相続ウォークでも、これらの義務が受託者の基本責任として整理されています。ここを軽く考えている家族ほど、後でもめます。
ちなみに家族信託は、後見制度と違って家庭裁判所への定期的な報告や手続きが不要です。これは前述の山本司法書士事務所でも説明されている、家族信託を選ぶ大きな理由のひとつです。
資格不要!18歳以上なら誰でもなれる

受託者になるのに特別な国家資格は不要で、家族であれば原則として就任できます。
正直に言うと、年齢要件は注意が必要です。今回調べた範囲では「18歳以上」とする記載と「20歳以上」とする記載が混在していました。
資格が要らないからこそ、誰を選ぶかは家族の判断に委ねられます。だからこの記事のような「選定基準」が要るわけです。
司法書士や弁護士は受託者になれない
司法書士や弁護士などの専門家は、業として家族信託の受託者になることはできません。

ここは誤解が多いところです。専門家は「契約書の作成」「設計の助言」「信託監督人」といった立場では関われますが、受託者そのものにはなりません。
財産を継続的に管理する受託者は、あくまで家族が担う。専門家は外側から支える。この役割分担を最初に理解しておくと、相談がスムーズです。
もし「身内に頼める人がいない」場合は、後述する一般社団法人や商事信託(信託銀行のサービス)が選択肢になります。
2.誰に頼むのが正解?後悔しない「受託者の選定基準」
受託者は「信頼性・継続性・分別管理ができるか」の3つの基準で選ぶのが正解です。
私が相談現場で使っていたチェック軸を表にしました。直感で「この子なら」と決める前に、一度この観点で見てほしいです。
| 判断軸 | 見るポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 信頼性 | 受益者のために誠実に動けるか | 金銭管理にルーズな人は避ける |
| 継続性 | 契約期間中ずっと健康・現役か | 高齢の兄弟は途中で担えなくなる恐れ |
| 分別管理 | 自分の財産と分けて管理できるか | 信託口口座の開設に対応できるか |
| 家族の納得 | 他の相続人が受託者選びに納得しているか | 不公平感はのちの争いの火種になる |
特に「家族の納得」は見落とされがちです。受託者だけ得をしているように見えると、相続のときに必ず蒸し返されます。
2-1.【比較】家族vs家族の会社(法人)

受託者は「個人(家族)」と「家族が経営する法人」のどちらかを選べ、財産規模や承継の長さで向き不向きが分かれます。
| 観点 | 個人(家族) | 法人(一般社団法人など) |
|---|---|---|
| 設立の手間 | 不要 | 法人設立の手続きと費用が必要 |
| 継続性 | 受託者が亡くなると後継者が必要 | 法人が続く限り受託者が継続 |
| 管理コスト | 低い | 法人の維持費がかかる |
| 向くケース | 自宅と預貯金中心 | 収益物件など財産が多い・承継が長期 |
正直なところ、財産が自宅と預貯金くらいなら個人で十分です。法人を作るほうがコストも手間も増えるので、私は安易な法人化は勧めません。
2-2.収益物件があるなら「法人化(一般社団法人)」も選択肢
アパートなどの収益物件を信託財産にするなら、一般社団法人を受託者にする設計が選択肢になります。

理由は継続性です。個人受託者が亡くなると財産管理に空白が生じますが、法人なら受託者が途切れにくい。賃貸経営のように何十年も続く管理では、この差が効いてきます。
ただし法人受託者は、設立費用と毎年の維持コストがかかります。物件が1棟あるかないか、くらいの規模なら個人受託者+後継受託者の指定で足りることが多いです。
2-3.受託者は「1名」が基本|複数人選任のリスクと運用ルール
受託者は1名にするのが基本ですが、共同受託者として複数人を選任することも可能です。
複数人にすると、意思決定で意見が割れたとき財産管理が止まります。兄弟2人を共同受託者にして、修繕や売却の判断でもめる、というのはありがちな失敗です。
私の意見としては、原則1名。そのうえで「第二受託者(後継受託者)」を契約に入れて、1人目が担えなくなったときのバトンを用意しておくのが現実的です。
3.受託者候補がいない時の4つの解決策

身近に頼める家族がいない場合でも、甥・姪への依頼、一般社団法人の設立、家族の会社の活用、商事信託の4つで対応できます。
| 解決策 | 内容 | 向くケース |
|---|---|---|
| 甥・姪や兄弟に依頼 | 信頼できる親族に頼む | 子はいないが親族に適任者がいる |
| 一般社団法人を設立 | 法人を作り受託者にする | 継続性を重視・財産が多い |
| 家族の株式会社を利用 | 既存の同族会社を受託者にする | すでに法人を持っている |
| 商事信託を検討 | 信託銀行等のサービスを使う | 親族に頼める人が誰もいない |
このうち商事信託は、信託銀行などが営業として受託する仕組みです。家族信託(民事信託)とは別物で、報酬や対象財産に制約があります。最後の手段として位置づけるのが現実的です。
❶信頼できる甥・姪や兄弟に依頼する
子がいない場合、信頼できる甥・姪や兄弟に受託者を依頼するのが、現実的な第一候補です。

ただし兄弟は自分と年齢が近いことが多く、継続性の面で不安が残ります。私なら、世代が下の甥・姪を優先して検討します。
そして誰に頼むにせよ、受託者の辞任・変更に備える条項を契約に入れておくことが欠かせません。前述の福井合同事務所も、この備えの重要性を指摘しています。
受託者が亡くなると信託契約は終了します。だからこそ、二次受託者(後継受託者)を定めておく工夫が、現場では標準的な対策になっています。
よくある質問
受託者の選び方について、相談現場でよく聞かれる質問をまとめました。
よくある質問
最後に率直な一言を。受託者選びは「一番信頼できる人を選ぶ」だけでは足りません。その人が20年後も担えるか、亡くなったら誰が継ぐか、までを契約に書いて初めて完成です。候補が固まったら、年齢要件の確認も含めて一度専門家に相談してください。
