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家族信託の受託者の選び方|家族・法人どちらが正解か基準を解説

梶原 朋子 / 更新:2026-06-24
家族信託の受託者の選び方|家族・法人どちらが正解か基準を解説
家族信託を始めようと決めても、最後まで悩むのが「受託者を誰にするか」です。財産を任せる相手を間違えると、後々の家族トラブルに直結します。結論を先に言うと、受託者は『信頼できて、長く財産管理を担える健康な家族』を1名選ぶのが基本です。私が司法書士事務所で見てきた相談の中でも、ここでつまずく人が一番多かった部分なので、選び方の判断軸を具体的に整理します。
  • 受託者に国家資格は不要で、家族の中から1名選ぶのが基本。
  • 司法書士や弁護士など専門家は、業として受託者になることはできない。
  • 収益物件が多い場合は、一般社団法人を受託者にする設計も選べる。
  • 受託者が亡くなると信託が終わるため、後継受託者を契約で定めておく。
  • 受託者は信託財産を自分の財産と分けて管理する義務を負う。

家族信託 受託者 選び方の結論

家族信託の受託者とは?選び方、注意点を詳しく解説
家族信託の受託者とは?選び方、注意点を詳しく解説

受託者は、財産管理を任せられる信頼性と、契約が続く間(多くは数十年)を担える健康・年齢を満たす家族から1名を選ぶのが結論です。

理由はシンプルで、受託者は信託財産を管理・運用・処分する強い権限を持つからです。

権限が大きいぶん、信頼できない相手だと財産を私的に使われるリスクがあります。逆に、信頼できても高齢すぎる人だと、途中で管理ができなくなる。だから私は「信頼性」と「継続性」の2軸で見るよう勧めています。

受託者選びで一番大事なのは「今信頼できるか」だけでなく「20年後も管理を続けられるか」です。後継受託者の指定までセットで考えてください。

1.家族信託の受託者とは?

受託者とは、委託者から託された信託財産を管理・運用・処分する人です。

1.家族信託の受託者とは?

家族信託は「委託者・受託者・受益者」の3者を定める制度です。財産を託す親が委託者、託される子などが受託者、利益を受け取る人が受益者にあたります。

実務で多いのは、親が委託者かつ受益者、子が受託者というかたちです。親の財産を子が管理し、その利益は親本人が受け取る、という設計ですね。

受託者は家族の代表として財産を守る人

受託者は、信託財産を自分の財産と完全に分けて管理する「分別管理」の義務を負います。

具体的には、信託口口座を開設し、信託財産を受託者個人の財産と区別して運用します。

さらに受託者には、善管注意義務と忠実義務があります。要するに「自分のためではなく、受益者のために誠実に管理しろ」というルールです。

前述の相続ウォークでも、これらの義務が受託者の基本責任として整理されています。ここを軽く考えている家族ほど、後でもめます。

ちなみに家族信託は、後見制度と違って家庭裁判所への定期的な報告や手続きが不要です。これは前述の山本司法書士事務所でも説明されている、家族信託を選ぶ大きな理由のひとつです。

資格不要!18歳以上なら誰でもなれる

司法書士が家族信託の悪いところを話します
司法書士が家族信託の悪いところを話します

受託者になるのに特別な国家資格は不要で、家族であれば原則として就任できます。

正直に言うと、年齢要件は注意が必要です。今回調べた範囲では「18歳以上」とする記載と「20歳以上」とする記載が混在していました。

受託者の年齢要件は、ネット上の記載で「18歳以上」「20歳以上」と分かれています。実際に契約する前に、法令本文と依頼先の専門家への確認が必須です。

資格が要らないからこそ、誰を選ぶかは家族の判断に委ねられます。だからこの記事のような「選定基準」が要るわけです。

司法書士や弁護士は受託者になれない

司法書士や弁護士などの専門家は、業として家族信託の受託者になることはできません。

司法書士や弁護士は受託者になれない

ここは誤解が多いところです。専門家は「契約書の作成」「設計の助言」「信託監督人」といった立場では関われますが、受託者そのものにはなりません。

財産を継続的に管理する受託者は、あくまで家族が担う。専門家は外側から支える。この役割分担を最初に理解しておくと、相談がスムーズです。

もし「身内に頼める人がいない」場合は、後述する一般社団法人や商事信託(信託銀行のサービス)が選択肢になります。

2.誰に頼むのが正解?後悔しない「受託者の選定基準」

受託者は「信頼性・継続性・分別管理ができるか」の3つの基準で選ぶのが正解です。

私が相談現場で使っていたチェック軸を表にしました。直感で「この子なら」と決める前に、一度この観点で見てほしいです。

受託者を選ぶときの判断基準
判断軸見るポイント注意点
信頼性受益者のために誠実に動けるか金銭管理にルーズな人は避ける
継続性契約期間中ずっと健康・現役か高齢の兄弟は途中で担えなくなる恐れ
分別管理自分の財産と分けて管理できるか信託口口座の開設に対応できるか
家族の納得他の相続人が受託者選びに納得しているか不公平感はのちの争いの火種になる

特に「家族の納得」は見落とされがちです。受託者だけ得をしているように見えると、相続のときに必ず蒸し返されます。

2-1.【比較】家族vs家族の会社(法人)

10分でわかる!「家族信託」のメリットと注意点
10分でわかる!「家族信託」のメリットと注意点

受託者は「個人(家族)」と「家族が経営する法人」のどちらかを選べ、財産規模や承継の長さで向き不向きが分かれます。

個人受託者と法人受託者の比較
観点個人(家族)法人(一般社団法人など)
設立の手間不要法人設立の手続きと費用が必要
継続性受託者が亡くなると後継者が必要法人が続く限り受託者が継続
管理コスト低い法人の維持費がかかる
向くケース自宅と預貯金中心収益物件など財産が多い・承継が長期

正直なところ、財産が自宅と預貯金くらいなら個人で十分です。法人を作るほうがコストも手間も増えるので、私は安易な法人化は勧めません。

2-2.収益物件があるなら「法人化(一般社団法人)」も選択肢

アパートなどの収益物件を信託財産にするなら、一般社団法人を受託者にする設計が選択肢になります。

2-2.収益物件があるなら「法人化(一般社団法人)」も選択肢

理由は継続性です。個人受託者が亡くなると財産管理に空白が生じますが、法人なら受託者が途切れにくい。賃貸経営のように何十年も続く管理では、この差が効いてきます。

ただし法人受託者は、設立費用と毎年の維持コストがかかります。物件が1棟あるかないか、くらいの規模なら個人受託者+後継受託者の指定で足りることが多いです。

法人化は「収益物件が複数」「管理が長期にわたる」ケースで初めて検討する設計です。財産が少ないのに法人を作ると、コスト倒れになります。

2-3.受託者は「1名」が基本|複数人選任のリスクと運用ルール

受託者は1名にするのが基本ですが、共同受託者として複数人を選任することも可能です。

複数人にすると、意思決定で意見が割れたとき財産管理が止まります。兄弟2人を共同受託者にして、修繕や売却の判断でもめる、というのはありがちな失敗です。

私の意見としては、原則1名。そのうえで「第二受託者(後継受託者)」を契約に入れて、1人目が担えなくなったときのバトンを用意しておくのが現実的です。

3.受託者候補がいない時の4つの解決策

家族信託は認知症でもできる? 押さえておきたい判断基準のポイントを解説
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身近に頼める家族がいない場合でも、甥・姪への依頼、一般社団法人の設立、家族の会社の活用、商事信託の4つで対応できます。

受託者候補がいない時の4つの解決策
解決策内容向くケース
甥・姪や兄弟に依頼信頼できる親族に頼む子はいないが親族に適任者がいる
一般社団法人を設立法人を作り受託者にする継続性を重視・財産が多い
家族の株式会社を利用既存の同族会社を受託者にするすでに法人を持っている
商事信託を検討信託銀行等のサービスを使う親族に頼める人が誰もいない

このうち商事信託は、信託銀行などが営業として受託する仕組みです。家族信託(民事信託)とは別物で、報酬や対象財産に制約があります。最後の手段として位置づけるのが現実的です。

❶信頼できる甥・姪や兄弟に依頼する

子がいない場合、信頼できる甥・姪や兄弟に受託者を依頼するのが、現実的な第一候補です。

❶信頼できる甥・姪や兄弟に依頼する

ただし兄弟は自分と年齢が近いことが多く、継続性の面で不安が残ります。私なら、世代が下の甥・姪を優先して検討します。

そして誰に頼むにせよ、受託者の辞任・変更に備える条項を契約に入れておくことが欠かせません。前述の福井合同事務所も、この備えの重要性を指摘しています。

受託者が亡くなると信託契約は終了します。だからこそ、二次受託者(後継受託者)を定めておく工夫が、現場では標準的な対策になっています。

よくある質問

受託者の選び方について、相談現場でよく聞かれる質問をまとめました。

よくある質問

家族信託 受託者 選び方とは?
受託者の選び方とは、財産を任せられる「信頼性」と、契約期間を担える「継続性」、そして「分別管理ができるか」を基準に、家族から1名を選ぶ判断のことです。受託者は信託財産を管理・処分する強い権限を持つため、慎重に選ぶ必要があります。
家族信託 受託者 選び方の費用は?
受託者を家族から選ぶ場合、就任そのものに費用はかかりません。ただし受託者報酬を設定するかは契約で決められます。一般社団法人を受託者にする場合は、法人設立費用と毎年の維持費が別途必要です。具体的な金額は依頼先の専門家への確認が必要です。
家族信託 受託者 選び方の始め方は?
まず家族の中で受託者・後継受託者の候補を絞り、財産規模に応じて個人か法人かを決めます。そのうえで司法書士などの専門家に相談し、信託契約書の作成と信託口口座の開設へ進むのが一般的な流れです。

最後に率直な一言を。受託者選びは「一番信頼できる人を選ぶ」だけでは足りません。その人が20年後も担えるか、亡くなったら誰が継ぐか、までを契約に書いて初めて完成です。候補が固まったら、年齢要件の確認も含めて一度専門家に相談してください。

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梶原 朋子

元司法書士補助者(相続・不動産登記実務に約8年携わる) ・ 相続・終活分野の専門Webメディアにて執筆実績多数

司法書士事務所での補助者経験を経てフリーランスライターに転身。家族信託や相続手続きの取材・執筆を専門とし、実際の相談事例や専門家への直接取材をもとに、制度の仕組みから費用の実情まで正確に伝えることを心がけている。

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梶原 朋子
梶原 朋子
司法書士事務所での補助者経験を経てフリーランスライターに転身。家族信託や相続手続きの取材・執筆を専門とし、実際の相談事例や専門家への直接取材をもとに、制度の仕組みから費用の実情まで

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