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メリット・デメリット・失敗しないポイント

家族信託のデメリットとは?失敗しないための注意点を解説

梶原 朋子 / 更新:2026-06-24
家族信託のデメリットとは?失敗しないための注意点を解説
親の認知症に備えて家族信託を検討しているけれど、「デメリットも多いと聞いて踏み切れない」という声を、私は事務所時代から何度も聞いてきました。結論から言うと、家族信託の最大の弱点は「本人に判断能力があるうちにしか始められない」「受託者に重い義務がのしかかる」「節税の道具ではない」の3つです。ここを理解せずに始めると、必ず後悔します。
  • 家族信託は認知症などで判断能力を失った後では原則組成できない(契約に意思能力が必要)。
  • 農地や年金受給権など、信託できない財産がある。
  • 受託者には分別管理義務・帳簿備付け・報告義務などの継続的な負担が生じる。
  • 家族信託は財産管理の制度であり、それ自体は節税スキームではない。
  • 身上監護(介護契約や医療同意)は家族信託の中心機能ではない。

家族信託 デメリットの結論

司法書士が家族信託の悪いところを話します
司法書士が家族信託の悪いところを話します

家族信託のデメリットは「始める時期の制約」「受託者の負担」「税務上の特例が自動では使えないこと」の3点に集約されます。

私が司法書士補助者として相続や信託の現場にいた約8年で、一番もったいないと感じたのは「あと半年早ければ間に合ったのに」というケースです。家族信託は信託契約を結ぶ制度なので、契約のときに本人の意思能力が必要になります。

根拠は信託法と民法にあります。信託契約の成立には委託者の意思が前提で、認知症が進んで判断能力を失うと、原則として新しく組成できません。

家族信託は「元気なうちにしか始められない」制度です。検討を始めた時点が、すでにタイムリミットだと思ってください。

そもそも家族信託とは

家族信託とは、自分の財産の管理や処分を、信頼できる家族に託す仕組みです。

そもそも家族信託とは

登場するのは3者。財産を託す「委託者」、託されて管理する「受託者」、利益を受け取る「受益者」です。たとえば父が委託者兼受益者、長男が受託者という形がよくあります。

成年後見制度との違いは、財産の積極的な活用ができる点にあります。後見人は本人の財産を守ることが優先で、原則として運用や売却に強い制約がかかります。一方、家族信託は契約で決めた範囲で柔軟に動かせます。

ただし、ここで誤解されがちなのが身上監護です。介護施設の契約や医療同意といった「身の回りの保護」は、家族信託の中心機能ではありません。そこは成年後見制度の役割です。

家族信託のデメリットは?注意するべきポイント

家族信託のデメリットは、大きく「制度の制約」「受託者の負担」「税務・コスト」「家族間トラブル」の4方向から整理できます。

家族信託のデメリットは?注意するべきポイント

競合記事では15項目に細かく分かれていますが、現場感覚で本当に効くのは数点に絞られます。以下の表で、影響度の大きいものから並べました。

家族信託の主なデメリットと影響度
デメリット内容私の現場での影響度
判断能力喪失後は組成不可契約に意思能力が必要。認知症進行後は原則不可大(最重要)
信託できない財産がある農地は農地法の制限対象、年金受給権は信託不可
受託者の義務・負担分別管理・帳簿備付け・報告義務が継続的に発生中〜大
受託者の責任が重い忠実義務・注意義務を負い責任を問われる
節税にはならない信託設定だけで税負担が軽くなるわけではない
損益通算の制限信託不動産の損失を他の所得と通算できない場合がある
親に切り出しにくい財産の話を持ち出すこと自体のハードル小(だが実は重い)
遺留分への配慮信託でも遺留分侵害額請求の対象になり得る

判断能力喪失後に組成できない

人生100年時代の必修項目!「家族信託」があなたの家庭に必要かどうかがこの動画を見れば理解できます。
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家族信託は、本人が認知症などで判断能力を失った後では、原則として新しく組成できません。

理由はシンプルで、信託契約は契約だからです。契約を結ぶには本人の意思能力が必要で、信託法も委託者の行為を前提にしています。判断能力が低下した後に残された道は、基本的に成年後見制度だけになります。

正直に言うと、これがデメリットというより「最大の落とし穴」です。私が相談を受けた中でも、家族が「来月にでも」と動き出したときには、すでに本人の受け答えが怪しくなっていたことがありました。間に合いませんでした。

「まだ元気だから大丈夫」と先延ばしにした家庭ほど、間に合わなくなります。検討段階で一度専門家に時間軸を確認してください。

親に切り出すのが難しい・受託者が見つからない

制度上の問題より先に、多くの家庭が「親に財産の話を切り出せない」という壁にぶつかります。

「財産を狙っていると思われたくない」という遠慮が、検討を遅らせます。前述のとおり時間との勝負なので、この心理的ハードルは実は大きなデメリットです。

もう一つが受託者のなり手問題。受託者は財産を管理し続ける役割で、責任も重い。遠方に住む子、本業が忙しい子には負担が大きく、引き受け手が見つからないこともあります。

私の経験では、相続や節税の話から入るより「親が認知症になったとき、口座が凍結されて生活費が出せなくなる」という具体的な困りごとから話すと、親も納得しやすかったです。

受託者の義務・責任・裁量の重さ

受託者は「任されるだけ」ではなく、信託財産を分別管理し、帳簿などの書類を備え、報告義務を負います。

受託者の義務・責任・裁量の重さ

信託法では、受託者に忠実義務と注意義務が課されています。信託財産は自分の財産と分けて管理し、勝手に使ってはいけません。帳簿をつけ、受益者に状況を報告する。これが何年も続きます。

さらに受託者の裁量が大きいことも、裏を返せばリスクです。契約の設計次第で受託者にかなりの権限が集まるため、他の家族から「不透明だ」と疑われる火種になります。

私が現場で勧めていたのは、信託監督人や受益者代理人を置く、または年1回家族で収支を共有する仕組みを契約に盛り込むことです。義務の重さを一人で抱えさせない設計が、トラブルを防ぎます。

受託者の負担を軽く見積もると、数年後に「もうやりたくない」と疲弊します。義務の中身を契約前に必ず家族で共有してください。

信託できない財産・税務上の注意点

【家族信託のデメリット】メリットだけじゃない?注意すべきこととは
【家族信託のデメリット】メリットだけじゃない?注意すべきこととは

すべての財産を信託できるわけではなく、農地や年金受給権など対象外のものがあります。

農地は農地法の許可制・制限の対象で、簡単には信託に入れられません。年金を受け取る権利も信託の対象にできません。「全財産をまとめて信託」というイメージは、実務では成り立たないことが多いです。

そして一番誤解が多いのが税金です。家族信託は節税スキームではありません。国税庁は信託に関する課税関係を個別に示しており、信託を設定しただけで税負担が必ず軽くなるわけではないことが分かります。

加えて、信託した不動産で赤字が出ても、その損失を信託外の所得と損益通算できない場合があります。収益不動産を信託に入れるときは、ここを税理士と詰めておかないと痛い目を見ます。

それでも家族信託が向いているケース

デメリットを踏まえても、家族で柔軟に財産を管理したい、二代目以降の承継まで決めておきたい、共有不動産を整理したい、事業承継を見据えたいケースでは家族信託が有力です。

それでも家族信託が向いているケース

特に共有不動産は相性が良いと感じます。共有者の一人が認知症になると売却も建て替えもできなくなりますが、信託で管理を一本化しておけば、その塩漬けを避けられます。

一方で、私が「家族信託は不要では」と感じるのは次のような場合です。資産がほとんどない、生前贈与などで財産の整理がほぼ済んでいる、本人が今後も経済的に問題なく生活できる。こうしたケースでは、費用に見合う効果が出にくい。

家族信託は万能ではありません。資産が少ない家庭では、後見制度や遺言で十分なことも多いです。

手続きと費用の現実

家族信託は、契約書の作成、必要書類の収集、不動産の名義変更(信託登記)といった手続きを伴い、登記まで含めると司法書士の関与が現実的です。

手続きと費用の現実

流れはおおむね、家族での話し合い→信託の設計→契約書作成→公正証書化→不動産があれば信託登記→専用口座の準備、という順です。

費用については、事務所ごとに設定が異なり、確かな一律の相場を出典付きで示せる数字が手元にありません。ここで適当な金額を書くのは不誠実なので、具体額は見積もりで確認してくださいとだけ申し上げます。

一点だけ正直に言うと、専門家への報酬は決して安くありません。だからこそ「本当に信託が必要か」を最初に診断してもらう価値があります。

よくある質問

【家族信託とは?】メリット・デメリットを詳しく解説
【家族信託とは?】メリット・デメリットを詳しく解説

よくある質問

家族信託のデメリットとは?
主なデメリットは、認知症などで判断能力を失った後は原則組成できないこと、農地や年金受給権など信託できない財産があること、受託者に分別管理・帳簿備付け・報告などの継続的な義務が生じること、そして信託しただけでは節税にならないことです。
家族信託のデメリットになる費用は?
家族信託では契約書作成・公正証書化・不動産の信託登記・専門家報酬といったコストが発生します。金額は事務所により異なるため、確実な相場として示せる出典付きの数字はありません。複数の専門家に見積もりを取って比較してください。
家族信託の始め方は?
まず家族で話し合い、信託する財産と受託者を決め、信託契約書を作成して公正証書にします。不動産があれば信託登記を行い、信託専用口座を準備します。判断能力があるうちでないと始められないため、検討は早いほど安全です。
家族信託は危険?失敗例は?
よくある失敗は、検討が遅れて本人の判断能力が低下し組成できなくなるケース、受託者の権限を広げすぎて他の家族とトラブルになるケースです。信託監督人を置く、収支を家族で共有するなどの設計で防げます。
家族信託と成年後見制度はどちらを使うべき?
財産を柔軟に運用・承継したいなら家族信託、介護契約や医療同意など身上監護が必要なら成年後見制度が向きます。家族信託は身上監護を代替しないため、両方を組み合わせる選択も現実的です。

迷っているなら、今日できる一歩は「親が元気なうちに、信託の要否だけでも専門家に診てもらう」ことです。間に合わなくなってから相談に来る家族を、私はもう見たくありません。

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梶原 朋子

元司法書士補助者(相続・不動産登記実務に約8年携わる) ・ 相続・終活分野の専門Webメディアにて執筆実績多数

司法書士事務所での補助者経験を経てフリーランスライターに転身。家族信託や相続手続きの取材・執筆を専門とし、実際の相談事例や専門家への直接取材をもとに、制度の仕組みから費用の実情まで正確に伝えることを心がけている。

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梶原 朋子
司法書士事務所での補助者経験を経てフリーランスライターに転身。家族信託や相続手続きの取材・執筆を専門とし、実際の相談事例や専門家への直接取材をもとに、制度の仕組みから費用の実情まで

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