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家族信託で後悔する12の失敗パターンと事前に防ぐ対策

梶原 朋子 / 更新:2026-06-24
家族信託で後悔する12の失敗パターンと事前に防ぐ対策
「家族信託を組んだけれど、本当にこれでよかったのか」――相談現場で何度もこの言葉を聞いてきました。結論から言うと、家族信託の後悔の大半は、契約のタイミングを逃したこと・家族の合意を取らなかったこと・専門家選びを間違えたことの3つに集約されます。逆に言えば、この3点を押さえれば後悔はかなり防げます。
  • 家族信託は本人に判断能力があるうちにしか組めない(認知症が進むと手遅れになる)。
  • 後悔の多くは受託者への権限集中と、他の相続人との不公平感から生まれる。
  • 遺留分は家族信託では消せず、侵害すると相続人から請求される。
  • 信託には30年ルール・1年ルールという強制終了の仕組みがある。
  • 設定費用の目安は50万〜100万円程度で、決して安くない。

家族信託 後悔の結論

家族信託で後悔しないためにはどうするべき?【家族信託の失敗事例3選】
家族信託で後悔しないためにはどうするべき?【家族信託の失敗事例3選】

家族信託で後悔する人の共通点は、「制度を理解しないまま、急いで組んだ」ことに尽きます。

私は司法書士事務所で8年ほど相続や不動産登記の実務に携わってきました。その中で家族信託の相談も数多く見てきましたが、トラブルになるケースには驚くほど共通点があります。

いちばん多いのは、家族の話し合いを飛ばして、親と特定の子どもだけで進めてしまうパターン。あとから他の兄弟が「聞いていない」と怒り出す。これが本当に多い。

家族信託は「節税の道具」ではなく「認知症で財産が凍結する前の備え」です。目的を取り違えると、ほぼ確実に後悔します。

家族信託とはどんな仕組み?

家族信託とは、自分の財産の管理や処分を、信頼できる家族に託す契約のことです。

家族信託とはどんな仕組み?

登場人物は3人います。財産を託す人(委託者)、財産を預かって管理する人(受託者)、そしてその財産から利益を受ける人(受益者)です。

たとえば親が委託者と受益者を兼ね、子どもが受託者になる。これが典型例です。親の不動産や預金を子どもが管理し、家賃や生活費は親のために使う、という形ですね。

最大の利点は、親が認知症になっても、子どもが財産の管理や売却を続けられること。通常、親の判断能力が落ちると銀行口座も不動産も「凍結」され、子どもでも勝手に動かせなくなります。家族信託はその凍結を避ける手段です。

ただし、前提として大事なことがあります。家族信託は、委託者本人に契約を結ぶ意思能力があるうちにしか組めません。

「家族信託で後悔する」のはなぜ?危険な制度?

家族信託そのものは危険な制度ではありません。後悔が生まれるのは、制度の制約を知らずに使うからです。

私が見てきた限り、家族信託は「使いどころを間違えなければ強力」という道具です。包丁と同じで、使い方を誤れば手を切る。それだけのこと。

後悔の原因として現場でよく挙がるのは、受託者への権限集中による不公平感、そして家族の合意不足です。財産を管理する子どもに大きな権限が集まるため、他の相続人が「あの子だけ得をしている」と感じやすい。

正直に言うと、制度の難しさよりも「家族の感情」のほうが厄介です。法律は専門家が整えられても、兄弟間のわだかまりまでは設計できません。

家族信託で後悔した12の失敗パターン

司法書士が家族信託の悪いところを話します
司法書士が家族信託の悪いところを話します

後悔につながる失敗は、大きく「タイミング」「家族関係」「財産の選び方」「受託者の問題」「制度の制約」「契約書と専門家」の6カテゴリーに整理できます。

以下に代表的なパターンを表にまとめました。どれも、相談現場で実際に起きていることです。

家族信託で後悔する主な失敗パターン
分類失敗の内容起きやすい後悔
タイミング親の認知症が進んで契約が結べないそもそも信託を組めず財産が凍結
家族関係兄弟・親族の合意を取らずに進めた相続発生後に深刻な対立
財産の選び方年金や農地など対象外の財産を入れようとした信託に組み込めず計画が崩れる
受託者の問題受託者の負担が重すぎる/管理できなくなる管理不全・受託者の疲弊
身上監護受託者でも施設入所契約はできないと知らなかった結局、後見制度が別途必要に
制度の制約遺留分・30年ルール・1年ルールを見落とす予期せぬ請求や強制終了
契約書・専門家自作や経験の浅い専門家で不備信託口口座が作れない等の実害
このうち最初の「親の認知症で契約が結べない」は、取り返しがつきません。後回しがいちばん危険です。

親の病気が進んで信託契約が結べなくなる

家族信託は、親に契約を理解する判断能力があるうちにしか組めません。認知症が進むと、もう契約できません。

親の病気が進んで信託契約が結べなくなる

これが、私がいちばん「もったいない」と感じる後悔です。

相談に来られた時点で、親御さんの認知症がかなり進んでいる。話を聞くと「去年までは元気だったのに」と。あと一年早ければ組めたのに、というケースを何度も見ました。

認知症で判断能力を失うと、預金も不動産も凍結されます。そうなると残された道は法定後見制度ですが、後見人は家庭裁判所が選び、財産の積極的な運用や生前贈与は基本的にできません。

私の本音を言えば、家族信託は「まだ早い」と思うくらいのタイミングが、ちょうどいい。元気なうちに動いてください。

兄弟や親族との間で家族信託を巡ってトラブルになってしまう

家族信託のトラブルで最も多いのは、受託者になった子どもに財産管理の権限が集中し、他の兄弟が不公平感を抱くことです。

財産を管理する人は、当然ながら通帳も実印も握ることになります。

他の兄弟から見れば「勝手に使っているのでは」という疑念が生まれやすい。実際には適切に管理していても、説明がなければ疑われます。

私が強くおすすめするのは、契約前に家族全員で集まって話すこと。受託者以外の兄弟にも内容を共有し、納得を得ておく。これをやらずに進めた家族は、ほぼ揉めています。

家族信託は「親と長男だけの密室」で決めてはいけません。関係する親族全員に内容を開示することが、最大のトラブル予防策です。

年金や農地など対象にできない財産を信託の対象にしてしまう

我が家に家族信託は必要ない?家族信託が不要な3つのケースとは
我が家に家族信託は必要ない?家族信託が不要な3つのケースとは

年金を受け取る権利は、家族信託の対象にできません。農地も、原則として簡単には信託に組み込めません。

年金は受給者本人にしか受け取る権利がない財産です。信託で「子どもが代わりに受け取る」ことはできません。

農地は農地法の許可が絡むため、信託の対象とするには高いハードルがあります。「実家の田畑も全部まとめて」と考えていた方が、設計段階で困るケースは少なくありません。

どの財産を信託に入れられるかは、最初の設計で必ず確認すべきポイントです。ここを曖昧にすると、計画全体が崩れます。

受託者に過度な負担がかかってしまう

受託者には、財産の管理だけでなく、帳簿の作成や受益者への報告といった継続的な義務が発生します。

受託者に過度な負担がかかってしまう

これが、想像以上に重い。

受託者は信託財産を自分の財産と分けて管理し、収支を記録し続ける義務を負います。長く続くほど負担は積み重なり、受託者の疲弊や管理不全につながると指摘されています。

仕事や育児で忙しい子どもが受託者になると、現実問題として手が回らない。引き受ける前に、何をどこまでやるのかを具体的に確認してほしいと思います。

受託者が財産を管理できなくなってしまう

受託者自身が病気や死亡で管理できなくなると、信託の運営そのものが止まってしまいます。

見落とされがちですが、受託者だっていつまでも元気とは限りません。

受託者が亡くなったり判断能力を失ったりしたとき、次に誰が引き継ぐのか。これを決めていないと、信託が宙に浮きます。

対策として、契約書に「第二受託者(後継受託者)」を定めておくこと。私が見た契約書でも、ここが抜けているものは少なくありませんでした。

受託者になったのに施設入所契約など身上監護ができない

【認知症対策】一生払うのは罠?家族信託が「1度きり」で済む理由
【認知症対策】一生払うのは罠?家族信託が「1度きり」で済む理由

家族信託の受託者は財産の管理はできますが、施設入所や医療の同意といった身上監護はできません。

ここを誤解している方が、本当に多いです。

家族信託でカバーできるのは、あくまで財産に関すること。親を施設に入れる契約や、介護方針の決定といった「身の回りの法律行為」は信託の範囲外です。

こうした身上監護が必要なら、成年後見制度を併用する選択も検討することになります。「家族信託さえ組めば全部解決」と思っていると、肝心なところでつまずきます。

家族信託=財産管理、成年後見=身上監護。役割が違うので、両方が必要になる場面があると最初に理解してください。

遺留分を巡るトラブルに発展してしまう

家族信託を組んでも、相続人の遺留分は消えません。信託の内容が遺留分を侵害すれば、相続人から遺留分侵害額の請求を受けます。

遺留分を巡るトラブルに発展してしまう

「信託で全部長男に渡るようにしたから安心」――これは危険な思い込みです。

遺留分は、一定の相続人に法律で保障された最低限の取り分です。家族信託でこれを上回って財産を集中させても、ないことにはできません。

私の経験上、遺留分を無視した設計は、後で必ずと言っていいほど火種になります。設計段階で、他の相続人の取り分にも目配りしておく必要があります。

よくある質問

相談現場でよく受ける質問を、制度面と費用の観点からまとめました。

よくある質問

家族信託 後悔とは?
家族信託の後悔とは、契約後に「思っていたのと違った」と感じる状態を指します。具体的には、親の認知症が進んで契約できなかった、兄弟と揉めた、年金や農地など対象外の財産を入れようとした、受託者の負担が重かった、遺留分や30年ルール・1年ルールを見落とした、といったケースです。その多くは、制度の制約を知らずに急いで組んだことが原因です。
家族信託 後悔の費用は?
家族信託の設定費用は、専門家の解説では50万〜100万円程度が目安とされています。決して安くないため、費用に見合う目的があるかを見極めずに組むと「払っただけだった」という後悔につながります。財産規模や設計の複雑さで変わるので、契約前に見積もりの内訳を必ず確認してください。
家族信託 後悔の始め方は?
後悔しない始め方は、第一に親が元気なうちに動くこと。判断能力を失うと家族信託は組めません。第二に、関係する家族・親族全員で内容を共有して合意を得ること。第三に、相続や家族信託の実務に詳しい司法書士・弁護士に相談することです。自作の契約書は信託口口座が作れないなどの実害が出やすいので避けてください。

最後に、現場から一言だけ。家族信託で後悔した人の多くは、制度のせいではなく「動くのが遅かった」「家族に話さなかった」ことを悔やんでいました。今この記事を読んでいるなら、まだ間に合います。まずは家族と話す日を決めてください。

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梶原 朋子

元司法書士補助者(相続・不動産登記実務に約8年携わる) ・ 相続・終活分野の専門Webメディアにて執筆実績多数

司法書士事務所での補助者経験を経てフリーランスライターに転身。家族信託や相続手続きの取材・執筆を専門とし、実際の相談事例や専門家への直接取材をもとに、制度の仕組みから費用の実情まで正確に伝えることを心がけている。

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司法書士事務所での補助者経験を経てフリーランスライターに転身。家族信託や相続手続きの取材・執筆を専門とし、実際の相談事例や専門家への直接取材をもとに、制度の仕組みから費用の実情まで

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